文化財所有者のみなさまへ
はじめに
所有者のみなさまへ
所有者のみなさまにおかれましては、日頃から文化財の保存・活用にご協力いただき感謝申し上げます。文化財は先人が残してくれた文化的所産であり、国民共有の財産です。これらの有形・無形の文化財を大切に守り、将来に確実に継承するには、適切な管理と地道な努力が不可欠となります。文化財を守るための管理を継続しながら、もしものときに備えることも大切です。例えば、形のある文化財は、しっかりと管理をしていても、不慮の事故や自然災害によって文化財が被害を受けてしまうことがあります。また、祭りなどの無形民俗文化財では、少子高齢化に伴い行事を継続することの難しさが問題となるなど、所有者による管理行為だけは対処できないさまざまな事案が見られるようになりました。
さらに、傷んだ文化財を修理したいときなど、何かがあったときは関係者に相談するだけでなく、法・条例に基づき届出などの手続きをすることも必要となります。所有者の皆様が文化財の保存・活用を進めるにあたり、いろんな場面に出会うことが想定されることから、ここでは、「文化財の管理」の要点、「文化財の手続き」の概要について、簡単にご説明します。
文化財の管理
適切な管理
▶文化財を良い状態で管理するためには良好な保存環境を確保することが大切です。
文化財は適切かつ地道な管理を通して、確実に保存されその価値を守ることができます。例えば、建物を健康に保つためには、点検を行い保存環境の問題点を把握して改善に努めることが必要です。とくに湿気は文化財の保存にとって大敵であり、地盤における効率の良い排水だけなく、建物周辺の樹木を伐採し、荷物を整理することで通風が確保され、腐食や虫害から文化財を守ることができます。室内と周辺を整理整頓して清掃すること、これこそが建物に求められる管理行為の基本です。かたや、仏像や絵画などの文化財は、保管場所は常に清潔な保存環境を保つことを心掛け、防火・防犯の観点からも安全性が確保された場所が望まれます。直接的かつ過度な清掃は控えていただき、実施する場合も埃をぬぐう程度の軽微な行為に留めることが大切です。寺社や資料館などで行われる史料等の虫干は文化財の保存だけでなく点検も同時に行える有効な手段です。所有者の皆様には、何よりも日頃から文化財の存在を気にかけていただき、温かく見守っていただくことが大切です。
保管状況の確認、巡視、見回り
▶離れた場所にある文化財は、定期的な見回りを実施してください。
▶監視の目を光らせることで、不法行為の抑止につながります。
長い間、文化財から目を離し確認を怠ると、発生した異常に対して適切な処置をすることが遅れ、文化財の価値を失う恐れが出てきます。どんな種別の文化財でも早めの確認、対応が望まれます。史跡など土地に定着している文化財では、地盤面の異常なひび割れや湧水などが発生していないかを見回りで確認して下さい。
建物は定期的に屋根を含む外観の目視確認を行い劣化の把握に努めてください。室内に保管されている史料等の文化財については、虫干しを行う際や清掃時に欠損・劣化等が発生していないかを確認することが望まれます。人里離れた場所にある天然記念物の樹木などは、定期的に巡視するだけでなく、強風発生後や台風通過後に枝の折損が見られるため、適宜確認をお願いします。集落内外の建物に保管されている仏像等の文化財については、お参りや定期的な清掃に併せ保管状況を確認してください。頻繁な状況確認は文化財の異変を察知するだけなく、常に監視の目を光らせることで犯罪行為の抑止にもつながります。
防災・防犯対策
▶文化財の防災・防犯は事前の備えから始めましょう。
日本列島は古来より大きな地震が発生し国土に甚大な被害をもたらしてきました。また、昨今の地球環境の変化により大雨・台風等の自然災害が多発するようになり、屋外にある建物等の文化財が壊れたり、史料等の文化財が水損することが頻繁に起きています。かたや、不審火等の火災で大事な文化財を焼失したり、各地で仏像等の文化財の盗難が散見されるようになり、所有者の皆様が普段から十分な注意と管理をしていても予期せぬことが原因で貴重な文化財が失われる事態が生じています。しかし、地震、台風、水害等の自然災害や火災、そして盗難などの犯罪に対しては事前に十分な対策をしておくことで、もしものとき、文化財への被害を軽減することができます。「文化財の防災・防犯対策」に文化財ごとの対策を示していますので、ぜひご参照ください。
文化財の手続き
▶文化財を管理する上で、事前に届出するなど手続きが必要となる場合があります。
皆様がお持ちの国指定(登録有形文化財を除く)、県指定の文化財で、下記の行為をおこなうときは、文化財保護法・同条例にもとづき手続きが必要です。あらかじめ市町村にある文化財主管課を通して届出または申請をしてください。代表的な手続きは次のものがあります。
このほか、文化財保護法・同条例にはさまざま手続きが定められています。登録有形文化財を含め、所有者の皆様が「文化財の手続きは・・?」とお困りのときは、市町村または県文化財保護課にご相談ください。