満干の潮は、北九州市と田川郡香春町の境界付近に所在する金辺(きべ)峠の西方約2kmの山中、満干谷(みちひだに)の標高約431m地点において確認された国内最大級の間欠冷泉である。間欠冷泉とは地下の空洞などに、地下水が一定量溜まった際、サイフォンの原理によって、間隔をあけて地下水が噴き出す現象で、満干の潮は不定期に湧水を繰り返す特徴があり、湧出の挙動には地球潮汐(ちょうせき)の影響が明瞭に認められるため、稀有な事例として、学術的価値が高い。この湧水に起因して河川の水位が上昇する現象を頂吉(かぐめよし)の住民は「潮が満ちる」と表現してきており、「満干の潮」の名称はこのことに由来する。なお、国内で著名な間欠冷泉は、地元で潮滝(しおたき)と呼ばれている岡山県新見市の「草間の間歇冷泉(かんけつれいせん)」(国指定天然記念物)、福井県越前市の「時水(ときみず)」(福井県指定名勝)など、満干の潮と合わせて5か所が知られている。