京ヶ辻遺跡は、京都郡みやこ町有久に所在する。発掘調査によって、古墳時代中期(5世紀前半)の初期須恵器(甕や𤭯(はそう)、壺、坏蓋、高坏、器台、甑(こしき)など)、朝鮮半島系軟質(なんしつ)土器(甑、長胴甕)、鉄鋌(てってい)などの朝鮮半島系遺物が見つかっている。 初期須恵器は大阪府の大庭寺(おばでら)遺跡と共通するものや、初期須恵器でも古い型式のものがある。朝鮮半島系軟質土器は、土器の作り方から、朝鮮半島の土器の影響が強く認められる資料である。 京ヶ辻遺跡出土須恵器は胎土分析によって、北東約1kmの位置にある居屋敷窯跡や大阪府堺市の陶邑窯跡群で生産されたものが含まれていることが判明している。このうち居屋敷窯跡では、初期須恵器を焼いた1基の登り窯が見つかっており、京ヶ辻遺跡出土品の一部が居屋敷窯で焼成されたことを裏付ける資料である。 本件は、北部九州において最古の一群に位置付けられる初期須恵器であり、豊前地域で初期須恵器が生産されたことを示すとともに、その流通や地域間関係の実態、また初期須恵器に係る朝鮮半島からの渡来系の人々の動向を語る上で重要な資料である。また、居屋敷窯跡出土品は、京ヶ辻遺跡出土品の一部を生産した須恵器窯であることが実証されており、強い関係性が認められる。