像高160cmの樟の一木造で、内刳がなく古様を示す。頭部は高い髻を結び、眼を怒らせ口を強く結ぶ。体は膝までの甲をつけ、沓をはき、両肩・腹・両脛に獅噛をつけ、胸に鬼面を彫り出す。左手に宝塔をかかげ、右手には宝棒を持つ。足下には雲の上に女形の地天がおり、両側に2匹の鬼が従う。地天が毘沙門の両足をささえ、鬼を伴うものを兜跋毘沙門と呼ぶ。兜跋毘沙門は、西域から伝わった王城国土の守護神。粘りを感じさせる丸味をおびた彫り方、重々しく力強い姿等、10世紀頃の制作と考えられる名品で、観世音寺の群像の中でも最古のものとしてきわだっている。