菅原道真の「都府楼はわずかに瓦の色をみる観音寺はただ鐘の声をきく」という詩にうたわれた名鐘。竜頭は荒削りの力強い表現になる極めて大形なつくり。笠形は低平で、圏線をめぐらせて内外両区に分け、上帯、下帯は各々異なる連続唐草文を力強い表現で陽鋳する。撞座は蓮肉の大きい複弁十二葉で姿が美しい。笠上に「天満」「満」と2ケ所陰刻があり、口唇の下面に「上三毛」(現在の築上郡)「……麻呂」と陰刻がある。鐘身は妙心寺の文武天皇2年(698)銘のある鐘とほとんど同寸で、竜頭は同趣ながらさらに雄渾、上下帯の文様もまた力強い。おそらく飛鳥時代に妙心寺鐘に先行して、同じ工房で制作されたものと思われる。