久留米市の江南山梅林寺に伝来する、朝鮮半島より渡来したとみられる仏画。「楊柳観音」あるいは「水月観音」と呼ばれる形式の観音図で、海中の岩座に半跏趺坐する観音菩薩と、合掌しそれを見上げる善財童子を描く。画面左下方には供物をささげる高貴な女性と侍女が、左上方には天部と童女が来臨するようすが表される。金泥を多用した細かく丁寧な描写等には高麗時代(918~1392)の仏画の特徴がみられるが、朝鮮王朝時代(1392~1910)の仏画の様式も随所に確認できる。高麗時代の伝統を継承しながら新たな様式が形成されていった、朝鮮王朝時代初期の作例と位置づけられる。画面の右下端には、朝鮮王朝第4代世宗の9年にあたる宣徳2年(1427)の年紀と2人の施主の名が墨書される。制作年代が記された仏画としては朝鮮王朝時代最古級のもので、貴重である。〈写真提供 九州国立博物館〉