豊前市は、福岡県の東南端に位置し、南に豊前修験道の一大拠点であった求菩提山をひかえる。「求菩提の農村景観」は求菩提山山麓に位置し、犬ヶ岳を水源とする岩岳川沿いの狭隘な谷間に石積み棚田や農村集落が形成されている。明和元年(1764)の「豊刕求菩提山絵図」によると、山中には修験道の堂舎群や行場である岩窟群が点在し、山麓には修験者の生活の基盤となった集落や棚田が描かれている。明治に入ると修験道廃止令に伴い、求菩提山は修験の山としての歴史に終止符を打つが、求菩提山の豊かな自然を背景に育まれた修験道文化は山麓の人々の生活とともに文化的景観として現在に継承されている。