八女市黒木町は、福岡県筑後地方の南部、矢部川と笠原川の合流点の北西に位置する。黒木町は中世の猫尾城の城下を起源とする。猫尾城の廃城後、元和6 年(1620)に筑後国が久留米藩、柳河藩に分割されると、久留米藩の在郷町となった。天正15 年(1587)に現在の下町、慶長年間に中町・上町が町立てされ、この時期に中井手用水も整備されたと推定される。正徳4年(1714)には黒木廻水路も整備され、以後江戸時代から昭和前期を通じて栄えた。黒木の町並みは、「居蔵造」と呼ばれる土壁で塗籠めた防火性の高い町家が立ち並ぶ。居蔵造の町家は入母屋造妻入、桟瓦葺で両袖に下屋と前庇を設け、雨がかかりやすい一階外壁の腰部には、近在で産出する巨大な青石を貼るものもある。重厚な居蔵造の町家とともに、矢部川の堰や、町中を流れる水路、矢部川対岸の棚田など水利にまつわる歴史的景観を今に伝える。