松延家住宅は、久留米から熊本への脇往還の宿場町であった兼松に位置する。幕末には柳河藩の御用商人として和紙や茶などを取り引きしていた商家である。本住宅は街道に面して東側の土間部と西側の座敷部の2棟が並立して内部で接続する。両棟共に木造2階建、正面入母屋造、妻入、桟瓦葺、外壁は漆喰で塗り込まれた土蔵造である。土間部は、通り庭沿いに「店」、「納戸」、「次」の3室が並び、その奥の突出部に「裏座敷」がある。座敷部は「広間」、「女部屋」、「仏間」、「表座敷」など6室を設ける。2階は両棟とも商品などを収納する物置として使用された。江戸時代末期の19世紀中頃の建設とされる。県内に多い妻入の町家であり、大規模で質も高い貴重な建築である。