遠見ヶ鼻は、福岡屈指の夕日が眺められる岬として知られ、この海岸付近では海食台と海食崖に芦屋層群の連続的な露頭が観察される。芦屋層群は、山口県西部から福岡県北部の海岸沿いに広く分布する地層で、新生代古第三紀(約6,500万年~2,500万年前)の中で、最も新しい地層(約3,200万年~2,500万年前)である。福岡県における古第三紀の地層は、石炭を包含する始新世の地層に代表されるように、概ね陸成層としての性格を有している。この中で、芦屋層群が海成層の特徴を有し、包含される化石もそれを裏付けていることは、日本列島が大陸から分裂し、島弧となる過程を示す地層として重要な意義を有する。指定地周辺では、二枚貝類の化石や甲殻類の生痕化石を観察することができ、海食崖では高さ約17mのストーム堆積物(平穏時と暴風時の波浪環境下で形成された堆積層)が視認される。いずれも保存状態が良好で希少性、学術的価値ともに高い。