本書は張楚金撰、雍公叡注「翰苑」(大唐顕慶5年(660)稿、全30巻)の抄本。中国では早く散逸し、我が国でも平安時代に伝来していたことは記録にみえるものの、近年まで確認できなかったという貴重な資料。内容は、勾奴以下の所謂蕃夷諸国の記述部分であり、三韓・倭国の条を含み、我が国古代史研究に貴重な資料を提供する。特に、これまで知られなかった「魏略」の文章が随所に引用されており、他書に見えない記述が豊富であることは、「魏志倭人伝」の研究のみならず、我が国の古代像を解明する上で重要な示唆を与えるものである。